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第7章環境教育最新事情

鶴岡義彦(千葉大学教育学部)

 

はじめに
現行の学習指導要領が平成元年(1989)に告示された後に、『環境教育指導資料』(1991:中・高校編、1992:小学校編)が刊行されました。学習指導要領作成過程では、環境教育は必ずしも十分に配慮されていたわけではありません。それは、例えばある教科では環境教育教材の扱いが旧学習指導要領下より軽くなったことからも分かります1)。環境教育推進が鮮明となったのは、リオデジャネイロでの「地球サミット」開催が目前に迫った頃、つまり学習指導要領告示の頃からでした。なお「地球サミット」は1992年6月に開催され、その正式名は「環境と開発に関する国連会議」でした。この会議には国連に加盟しているほとんどの国、国数にして約180か国が参加し、そのうち約100か国は元首・首相級が出席するという、歴史上例のないハイレベルかつ大規模なものでした。
いずれにしても文部省が『環境教育指導資料』を刊行したことは、我が国の学校における環境教育の歴史上、最大の画期をなす事件であったと言えるでしょう。それは環境庁が設立(1971)されてからちょうど20年後のことでした。
こうして昨今の環境教育は、ブームと呼べるほど活況を呈しています。しかしブームに終わってはなりません。ここでは、他の章との重複を避けながら、環境教育にかかわる近年の教育界の動きを紹介します。また筆者が環境教育の実践を参観したり実践報告を読んだりして気付いた、一層の検討を要するいくつかの点を指摘します。このことが、学校における環境教育を、「木を見て森を見ず」の状態に陥らぬよう広い視野に立って位置付けたり、一歩でも深化させたりする上で多少なりとも寄与する点があれば幸いです。
1 中央教育審議会の答申における環境教育
さて、21世紀の教育の在り方を考える時期を迎え、今年は教育に関する「審議会の年」となりました。その先陣を切って発表されたのは昨年(1996)の「第15期中央教育審議会第一次答申」2)でした。ここには今後の教育の基本となる方向が述べられています。環境教育はどのように論じられているでしょうか。関連ある主な箇所をピックアップした上で、学校における今後の環境教育の方向を考えてみましょう。
まず第1部「今後における教育の在り方」において、これからの社会を展望して次のような指摘を行っています。
今日、地球環境問題、エネルギー問題など人類の生存基盤を脅かす問題も生じてきている。これらは、大量生産。大量消費・大量廃棄型の現代文明の在り方そのものが問われる問題であるが、今後、地球規模でこれらの問題に取り組んでいく必要性はさらに高まり、この面で、我が国の貢献がさらに強く求められるようになって行くことが予測されるところである。
またこれを受けて、第3部「国際化、情報化、科学技術の発展等社会の変化に対応する教育の在り方」において一つの章を「環境問題と教育」に当てています。さらに答申では

 

 

 

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